あまりよく知られていませんが、旧札幌通りの古い建物は、100年くらいになるものは少なくなく、これからは持ち主の世代交代、資産価値の低下、老朽化のために、取り壊されていく運命にあることは間違いありません。
しかし、これらの古い建物には、北炭、三大財閥をはじめ、北海道の産業歴史に大きな存在感を持ったものもあれば、当時移住し起業した方を祖父母に持つ方もいらっしゃいます。
築年数から考えてもう時間の問題でつかえなくなるだろう98年の三菱合資会社の建屋に住む者として、ここに来る方々を見るたびに、「古い建屋は、人々の記憶を呼び戻す効果がある」と感じています。
現在、経済のグローバル化等によって岐路に立つ日本、開拓以来の北海道、室蘭で学ぶべきは歴史かもしれません。とすると、高齢化社会は、ここにいる人々の記憶、年表などには載らない“本物の歴史”を引き出す最後のチャンスかもしれません。
旧札幌通り沿いに点在する古い建物は私たちが“五感で歴史を感じることのできる空間”です。
もし私たちが目を向ければ、彼らは私たちの脳から感情と経験と智恵を引き出してくれるかもしれません。そして、100年の建屋には、80歳を越えた方もいます。100年という時間は語っていただくことのできる時間なのです。
今回のイベントは、旧札幌通りにある今年で90年になる旧丸越山口紙店さん(室蘭市海岸町2丁目―5)の赤レンガ倉庫をお借りし、90歳のお誕生会、そして歴史空間を感じながらのクリスマスキャンドルナイトを行うことで、私たち市民が室蘭に居てよかった!と思えるようなものにしたいと思い企画しました。
80代の山口社長さんの歴史話し、旧札幌通りの今昔の座談会に加えて、工大生によるJAZZ LIVEでアニバーサリー&クリスマスのお祝いを行います。
これを1つのヒントに、古い建物、本物の歴史、深みのある観光への関心が高まればと思います。
特に、古い想い出話し、昔の写真等のコピーなどを蘭歴建見会にご提供いただければ、未来につなぐことができるかもしれません。
村田正望